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出会い系の特徴

Tからの手紙は、中山勝負が済んだ翌日、高田馬場の喫茶店で頂戴したものである。
8月4日・土曜日。 午前9時。
我々取材班は、中山競馬場パドックにいた。 馬読みの天才・Tに実践でその力を見せてもらおうというわけだ。
中山で本格的な夏競馬が開催されるのは史上初めてという物珍しきもあり、また今日がその開催初日ということでか、第1レース前にしては人が多い。 「馬読みの基本姿勢。
第1レースのパドックに1分1秒も遅刻してはならない」Tが我々取材班のために記してくれた『フータロー地獄日記・番外編』にはこう記されている。 ここに馬読みの基本がすべて書かれている。
余計なことは語らない神様に対して、我々が「馬読みの基本をまとめてほしい」と無理なお願いをしたのだ。 我々のある意味で怠慢な要求に対して、神様はにこやかに応じてくれたのだ。

ただし、番外編を手渡すとき、一言付け加えることは忘れなかった。 「これ読んで、理解してもらえるかな」と言った、それは挑戦とも諦めともとれる表情をしていたようだつた。
実際、そんな要求をしておきながら、ぼくは日記本編の中に、ある一文を見つけていたのだ。 馬読みは、人に教えることはできない。
また教わったからといって分かるものではないと書いてきた。 別にもったいぶっているわけではないし、企業秘密というものでもない。
とにかく紙に書くと馬読みは安っぼくなってしまう。 もし一流の作家先生が馬読みを知って書くとなっても、正確に表現することはできないだろう。
視覚とか聴覚ではないのだ。 何と書けばいいか、嗅覚のようなものだ。
と言っても匂いを嗅ぐわけではない。 自分自身が全エネルギーを使って真正面から見て(匂いで感じてその馬が発散するエネルギー・勝負気合を嗅ぐのである。
だから競馬場のスタンドや窓越し、テレビや双眼鏡で見たってこれは分かるものではないのだ。 ギャンブルはすべて生、私は昔から言い続けてきた。

馬読みはまさにソレなのだ。 のちに馬読み日記と呼ぶようになる)競馬場のパドックには、Tの指定席があるという。
オッズ掲示板の対面真ん中、柵の最前列だ。 前もってそう言われている。
基本は遅刻しないことだ。 9時過ぎに到着するとすでに神様は指定席に立っていた。
「おはようございます。 早いですね」神様に対して発するには適切な挨拶とは思えないが、人並みの言葉しか浮かばないのだから仕方ない。
すると神様はニッコリ微笑んでこう言う。 「ああ、フータローにとって時間は無限にありますから」神様の発言はすべてが意外だ。
そしてまたこの人といると、ギャンブルに勝てそうな気がしてくるから不思議だ。 「もしかして編集局長が700万円も儲けることができたのも、この不思議なオーラがあったからではないか」ふとそんな気がした。
実際、Sの馬券術は、100%馬読みの神様に頼ったものではない。 ときには師匠に背いて外した馬券もあれば、自分で余計な馬券を買い足してプラスになるはずがマイナスになった日もある。
避に自分で選んで買った馬が1着で来て「Tさんに内緒で的中した」と日記の中で喜んでいる日もある。 一発勝負で700万円儲けたというならば話はわかるのだ。
極端な言い方をすれば「まぐれ」とも読めるのだから。 しかし、何ヶ月間も常勝を続ける馬券術なんであるのか?その答えを探っていくと、どうしてもパドックで馬の様子を見るという方法以外に、なにかしら不思議な力があるとしか思えないのだ。
『馬読みは姿勢が基本である。 正しい姿勢をして精神的な面も含めて、これから競走するという姿勢、勝つという姿勢がない馬でなければいけない』(馬読み日記・番外編)具体的な姿勢についても書いてある。

『自分でハミを噛み、グッとアゴを引いてツル首で厩務員をグイグイ引っ張っている。 もちろん歩様はスムーズで(後ろ足が)力強い踏み込みで』どうだろうか?正直言ってテレビで見る競馬解説者の言葉と、そう違わないと思う。
だからTは言うのだろう。 「言葉ではわからない」と。
『馬読み禁止事項』と題されたベージがある。 一、雨の日はやらない。
一、障害レースはやらない。 具体的なことを書いてはあるが、これが即連戦連勝につながるだろうか?もっとも重要な部分は『ケイパ基本勝負』の項目なのかもしれない。
一、ベースを守る。 一、ミキリ。
一、駒の上げ下げ。 ここはこの3本だけを言い切っている。

駒の上げ下げとは、文字通り、金の使い道だろう。 たとえ連敗していようとも、ここぞという勝負どころで勝つ。
そして勝った時点でさっと身を引く「ミキリ」。 そして他人に惑わされず、自分のべースを保つ。
この3つは、簡単なようでかなり難しい。 『ベースを守るとは?例えばネタ(軍資金)の話。
いつも5万円で勝負していたとする。 でも今日は3万円しかない場合、競馬に行かないのである。
普通は穴買い、ところが金に追われて大金を作らねばならなくなった。 当然、精神的にも追い込まれる。
またネタもいつもの 倍ある。 そうなるとまず百人中九十九人は本命党になって負ける。
つまり、その時の状況やネタによって自分のべースを乱すなということ』(番外編より)Tは第1レースの馬読みに入っていた。 今日は取材とはいえ勝ってもらわないと話にならない。

『番外編』に「パドックで余計な会話を交わさない」とある。 話し卦けることを極力抑え、結果を持つことにする。
「ちょっとあの3番、どうですかね?ねえプロのダンナ」話し掛けているのは我々ではない。 神様の隣にいるちょっとうるさそうな競馬ファンだ。
神様をプロと呼ぶのは理解するが、話しかけられては困る。 後ろから心配して見守っていたが、神様は不動だった。
迷惑そうな顔をするのではない。 完璧な「無視」だ。
後でこの件を聞いたのだが、神様は「ああ、セミプロさんね」のちに、この記事を読んだTから「おれはあんな人間を「さん」付けで呼んだりしないよ」と言われた)と言ったきりだった。 パドックでのTにとって彼は、単なるハエにしか見えなかったのか。
結果から先に言おう。 8月 日のこの日、Tは全敗した。
5レースまでやってひとつも的中しなかった。 「あの3レースがすべてでした」帰り際、神様はポツリと言った。
第3レースで馬読みの結論は4―7と出ていた(馬読みに馬名は不要だから、あえて書くのはやめよう)。 締め切り2分前のオッズで5倍を示している中穴馬券だ。
U番は本命馬だった。 これは馬読みで解釈すれば「消しきれない一番人気」という意味だろう。
日記を読んでわかったのだがTの馬読みで重要なポイントのひとつが、この一番人気の取捨である。 一番人気に支持される馬は、あらゆる意味で「いい馬」だ。

当然だがパドックでも際立っている場合が多い。 これをどうするか?それが馬読みの第一歩なのだ。
第3レースの結果は2―7だった。 馬連配当2170円。
4は届かず3着。 「惜しい、1着3着でしたよ」レースを見ないで4レースのパドック最前列にいる神様に報告したが、そのときは無言だったのだ「あの3レース、4はやっぱり3着馬なんです。
1着3着だろうが、あの馬はやはり3着の馬だった・・・・」我々は黙って聞くだけだ。 「それに、あのレースでミキリをつけるべきでした」まだ負けている。
しかも3レースの時点でだ。

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